「 ん～と・・・ アレ？ これ見ると どこのデパート

にも必ずある洋服売り場とか靴売り場が 無いんだけど 」

 「 ここの商店街をリサーチしてみたんですが

ブティックや靴屋は けっこう多いんですよね～～

だから デパートと個人商店が競合するのは避けようと

思って その分野はわざと外したんです

一方では 本屋や文房具店が まったくありませんよね

それで 書籍と文具コーナーを設けました 」 

 「 そうなのよね～～ こないだも アタシが

商店街を歩いていたら オジサンに このあたりに

文房具店はありませんか？って尋ねられたんで

衣料品店の一角にある１００円ショップを教えて

あげたんだけど それで用は足りたのかなあ？？？

（ これは ノンフィクションです ） 

本屋さんにしたって 以前は 何軒もあったのに・・・

それに みんなでダベったりできる喫茶店も いくつも

あったのよね～～ 」   

 「 そういったお店の存在って ほんとは とても

重要なんですよねえ～

無くなってみると あらためてその有難みがわかります

商店街に文化の香りがしなくなると その商店街は

衰退するって・・・ 誰かが言ってたなあ～～

それで《銀デパ》から文化を発信したくて 五階にギャラリー

を開設することにしたんですよ 」   

 「 アララ～～  人手がかかることばっかし・・・

だいたい 仕入れのスタッフも 販売のスタッフもいない

このデパートのフロアが 商品でイッパイになるのは 

いったいいつになることやら～～？

あ、でも シチロウくん チョット考えがあるって言ってた  

わよねえ～～   どんなこと？？？ 」

 「 一階フロアには テナントショップを三店舗

入れる計画なんですが・・・ 」

 「 あの～～ お話の途中なんですがあ～～

テナントショップって・・・ 何ッ？ 」 

 「 はあ～～？？？  そんなことも知らないで

よくデパートの責任者が務まりますねえ～～ 」

 「 またでた！  シチロウくんの《そんなことも

知らないで》ってセリフ ・・・ その言い方  ムカつくう～～ 」

 「 テナントショップというのは ビルやデパートや

ショッピングセンターの一区画を借りている店舗のことです

Ｋさんにわかりやすく説明すると 《銀デパ》が大家さんで

テナントショップが店子（たなこ）の間柄ですね

 「 そっか～～ じゃあ 月々 家賃収入が

あるわけだ～～ ♪ 」   

 「 そうです！ でね まずは テナント部分だけ

でも オープンさせようと思っているんですよ 」

 「 え！？  全館同時オープンじゃなくて

一階フロアだけ～～？ それって チョット変じゃない？ 」

 「 はい！ 変です！ 全国どこのデパートも

やってません！  まさに禁じ手！（笑） 」

 「 チョビットずつオープンなんて ずいぶんと

地味な方法ねえ～

アタシとしては テープカットや紅白の餅投げをしたり

して 華々しく全館同時オープンさせたいけどな～～ 」 

 「 餅投げとテープカットは 当分オアズケ！

他の階も 準備が出来次第 オープンしますからね

Ｋさんには 四階フロア全部を受け持っていただきます 」

 「 ホエ～！ 大抜擢やん ♪ ♪ ♪ 」

 「 なんせ人手がないので 致し方なく（苦笑）

単に 人件費節約のための苦肉の策ですよ 」 

 「 ・・・・・・・・・・！ 」

 「 僕は カラーコーディネーターと ラッピング

コーディネーターの資格を持っているので 三階の

ラッピング用品売り場を担当しますね

あとは 催事場とギャラリーの企画・運営と・・・

とにかく デパートコンシェルジュの僕に すべて

お任せください

Ｋさんって ケーサン もとい 計算が苦手みたいだから

僕 経理のほうもやりますから！ 」  

 「 アンタは スーパーマンかっ！ 」

（ なんで アタシが計算苦手なの 知ってんのよ～？ ）

 「 新聞折込チラシとかで？ 」

 「 それって 一昔前の感覚ですよね～

銀座の『ウエスト』のドライケーキの詰め合わせを

注文しときましたから 」

 「 そぎゃんシコバッタとよりか 実用品の

ほうが ヨカバイ！」

 「 い～えっ！ デパートは 夢を売る商売！

挨拶回りの品物にも 手抜きはできません！ 」